情報処理技術者試験の中でも、特に難易度が高く有名な資格である「ITストラテジスト」ですが、よく
「ITストラテジストは役に立たない」
「ITストラテジストなんて取ってどうするの?」
というような意見を目にします。
それらの意見に対し、実際に私がITストラテジストを取得して4年ほど経過してエンジニアとして業務をする中で感じたメリットやデメリットなど実情はどうなのかということについて今日は話していこうと思います。
ちなみにこのサイトはあくまで個人ブログなので、最終的に「転職エージェントをお勧めする」とか「オンラインスクールに誘導する」ということはないのでご安心ください。
まず、私個人は単なるSIerのエンジニアやPMをしておりますので、コンサルタントや経営に携わることがなく、実際には直接的に業務に関わる部分は少ないです。
先に結論から言うと、
周囲からは結構評価される
あるに越したことはないけど努力に見合わないかも
という感じです。
私がITストラテジストを取得した背景
まず、私がITストラテジストを受験したのは新卒でSIerに入社後6年くらいたったころでした。
その前にプロジェクトマネージャ試験にも合格しており、これ以上何か資格取ろうとなるとITストラテジストかシステム監査技術者くらいしかないなと思い、「20代のうちにITストラテジスト持ってるとかっこいいかな」くらいの感覚で受験しました。(実際に合格の結果が出たときは30歳になってましたが。)
実際の受験記については下記に記載してあります。
なので、「コンサルタントやりたい」とか、「経営に携わりたい」というような意識すらない状態でした。ただ、「転職には有利になるかも」とは少し考えてました。
若干、「PMとして、プロジェクト組成前段階の事を知りたいな」くらいは思ってましたが、これはあくまで後付けの理由ですね。
なので、結構よこしまな感情が入ってます。
実際に合格してみて
さて、ITストラテジストに合格してみて、役に立ったかと言われてみると、私個人としてはそれなりに役に立ってます。
まず、合格後、上司や先輩には一目置かれた感じはありました。
プロジェクトマネージャ試験についてはSIerということもあり受験する人も多く、部署内でも何人か持っている人がいるような状態でした。
しかし、ITストラテジストとなると、部署でも一人か二人しかもっておらず、かつ持っている人も10歳以上年上の人しかいなかったので、まだ若手と言われる年代の人が合格したということもあり、当時の課長にはかなり驚かれた記憶があります。
また、その後新しいことがやりたく部署異動したいという話をした際にも、異動先の部長や課長が私の経歴を見てやはりかなり評価をしていただいたようで、すんなりポジションを用意してもらえました。
それ以降も、上司や後輩からも「頭がいい」「ちゃんと勉強している」という評価を得ることは多く、社内での人事評価の面でも、自尊心の面でもかなり役に立ってのではないかと思っています。
転職自体はしていないですが、転職エージェントに登録してエージェントと話した際にも、「もちろん最終的には人柄ややってきたことを面接で話せるかにはなるけど高度資格は持ってると書類審査は通りやすいのと、最終的に採用側が同じランクの候補者がいたときにこっちにしますと上司に説明しやすい」というような話を受けました。
なので、個人的には結構役に立ったんじゃないかなと思ってます。
「役に立たない」と言われてしまう理由
さて、そんなITストラテジストですが、巷では「役に立たない」というような意見が見受けられます。
その理由を自分なりに解説していこうと思います。
取得難易度に対して得られるものが少ない
ITストラテジストは非常に難関資格です。
IT系以外を含めた資格難易度ランキングとかで調べても最上位にいます。
そんなITストラテジストに合格したんだから何かあるはず!と思う人も多いのではないでしょうか。
そんなことはありません。
まず、ITストラテジスト試験は「業務独占資格」や「必置資格」などではありません。
ITストラテジストに合格したから明日から何かができるようになる!といったこともありません。
業務独占資格:社労士や行政書士など、その資格を持っている人しか行えない業務のある資格。
必置資格:宅建や衛生管理者など、その業務を行うにあたって特定条件において特定人数その資格を持っている人が必要な資格。
なので、ITストラテジストに合格しても、合格一時金や転職による給料アップをしない限りは給料も上がらないし、突然仕事が変わるなんてこともありません。
また、上記のような「〇〇士」といった士業は一般的に知名度が高く、有名ですが、ITストラテジストはIT系かコンサルタントにいる人くらいしか知りません。
よって、業界内での評価は高くなりますが、あくまでそこ止まりということです。
結果、
すごく頑張って合格したところで劇的に何かが変わるわけではない
ということになり、
「役に立たない」
と言われることにつながっていると思われます。
でも、どちらかというとこの理由で「役に立たない」と言っている人は合格すらしていない人がほとんどだと思ってます。
すっぱいぶどうってやつですね。
なので「ITストラテジスト気になってるけど役に立たないって言われてるしどうしよう」って思ってる人は気にしなくていいと思います。
業務に携われる人はごく少数だから
次に想像される理由としてはこれでしょうか。
というか結局はこれに尽きるかなと。
ITストラテジストは経営戦略やIT企画部門にいる人、もしくは業務改善をするITコンサルタントといった業務に携わっている人がメインに関わってきます。
そういった中で、コンサル業以外の一般の事業会社の会社員がITストラテジストに合格したからといって経営戦略やIT企画といったところに携われるとは限りません。
そういったポストはかなり年配の人で埋まっていることが多く、異動もなかなかできません。
また、私のようなSIerにしてみると、基本的にSIerは業務改善を行うためのシステム構築しようという企画立案の段階にはおらず、ある程度方向性が決まった状態で提案して受注する、といったことになっております。
一部SIerにもプリセールスエンジニアやコンサルタントといった業務に携わっている人もいますが、大多数のSIerにはなかなか得た知識を役立たせる機会はありません。
結果、せっかく勉強して身につけた知識を発揮することがなく、
「役に立たない」
となってしまうわけです。
ただ、実際にこれらの場合、直接的にその業務に携われなくても、実際にはITストラテジストの中で学んだ知識が役に立つことはいくらでもあると思います。
例えばSIerでPMやエンジニアをやるにあたって、顧客のシステム部門やプリセールスエンジニア、コンサルタントといった実際にITストラテジストの業務を実施している人達と一緒に働く機会は多いと思います。
そういった人達との業務をしていくにあたって、話をしている内容への理解も深まりますし、そこにしっかりとレスポンスすると、こちらに対する評価も高くなります。
また、別の視点で、
このシステムは何を目的として作っていてどうなることがゴールなのか
というイメージを持ちやすくなります。
漠然とシステムを構築しているのではなく、その目的に意識が向くので不要なところはどこかわかりやすくなり、スケジュールが厳しいとなった際などに優先度をつけやすくなったりするわけです。
なので、直接的にその業務に携われなくても、得た知識をどうやって使っていくかが重要かと思います。
結果的に働き方を見て上司などがそのポジションに推薦してくれる可能性も上がるかと思います。
まとめ
今回はITストラテジスト試験が「役に立たない」と言われる理由と、そこに対しての考察、そして私の実体験も交えて文章にまとめてみました。
結論としては、
その資格に劇的な効果を求めるよりは、その資格を取ったことによる評価向上と、得た知識をどうやって使っていくかが一番重要だと思います。
ほとんどの資格はそうですよね。
なので、もしITストラテジスト試験興味があるけどちょっと尻込みしてる、って人は、周囲の声は無視して一度勉強してみて受験だけしてみるのはいかがでしょう。
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